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三田図書館・情報学会誌論文(論文ID LIS009245)

著者
長倉美恵子
和文タイトル
A Comparative Study of School Library Administration and Management Systems.(学校図書館管理運営組織の比較研究)
英文タイトル
A Comparative Study of School Library Administration and Management Systems --England, the United States and Japan--
掲載号・頁
No.9, p.245-260
発行日
1971-09-01
和文抄録

学校図書館は現代の学校の不可欠な一部であって,その管理運営組織は教育行政と学校経営の在り方によって大きく影響されると思われる。この研究は,教育行政と学校経営がそれぞれ異る英国,米国,日本の学校図書館を対象とし,その管理運営組織を比較,検討したものである。調査票により各国の調査を行い,かつ専門文献から情報を収集した。そして,学校組織における図書館の位置と,正式な学校職員組織上での図書館員の地位を総合,分析した。対象学校数は英国20,米国20,日本308(東京都を除く関東六県)である。調査票の質問事項は各国事情により多少変えたが,いづれも学校図書館員の資格,地位,責務をたづねた。この他に各校から学校組織図(日本は校務分掌表)を収集した。各国を調査,比較研究した結果の要約は次の通りである。

英国では学校経営の全責任は校長にあり,各校が強い自律性を持つという伝統がある。学校図書館の管理運営も各校長の方針に左右され,司書教諭任命権も校長にある。大規模な総合中等学校(comprehensive school)を除き,専任で学校図書館経営に従事する職員はいない。普通,校長が教師の一人を司書教諭に任命し,兼任で図書館経営に当らせる。司書教諭免許は必らずしも任命の前提とはしない。小学校では校長が直接に事務助手の助力を得て図書館経営に当る所もある。英国の大部分の学校では図書館,教育は国語科の一部と考えられている。歴史的に学校図書館の運営は,スポーツや音楽指導と同じく,課外教育に関連する教師の奉仕業務の一つと考えられている。

米国では教育行政と学校経営が責任段階で判然と区別されることがない。各学校区を代表する教育委員会は教育行政機関であると同時に管轄内全学校の経営機関でもある。各教師の自律性・独立性は強く・各教師間の調整をはかり,管理を行なうのは教育委員会の執行機関である教育長および校長である。この制度は学級経営および授業以外の教育活動を司る専門職の発達を促した。カウンセラーや学校看護婦と同様,学校図書館専門職員(school librarian)も専門職と考えられている。専門職としての確立には,一般社会における図書館員の専門職としての容認に負う所も大きい。学校教育が各学校単位でなく学校区単位として管理運営されている特色として,学校図書館管理運営も学校区単位で考慮される。各学校の図書館員は校長の管理下にあると同時に,学校区の図書館指導主事の監督下にある。学校区図書館課は全学校のための資料の集中購入,整理,専門職員の巡回奉仕などを行なう。

我国では教育行政と学校経営が責任段階により判然と分離されている。各校の経営は校長と教頭に委ねられ,全教職員は各校単位に極めてよく組織化されている。教育活動から施設管理まで,全てめ校務は全職員により分掌せられる。教師は教育活動に関連する全校務に平等に従事するという校務分掌制度は,専門職制の発展を阻止する一面を持つ。学校図書館運営を校務の一部とする伝統と,図書館経営は専門知識を必要とするという教育者間の観念的常識との対立が我国の学校図書館の管理運営に様々な矛盾をもたらしている。視聴覚教育も教育相談も,我国では校務分掌によって実施されている。殆んどの高校で学校図書館は図書部として管理運営せられている。小,中校では図書館教育と図書館経営が学校組織上で分離されて分掌される例が多いのが我国の特色である。

三ヵ国を通じて,学校図書館専門職員には教師または教師と同等の者が任ぜられている。歴史的背景は互いに異なっているが,英国と我国は司書教諭制をとっており,米国は学校図書館員制を支持している。各国とも中等教育段階では図書館は学校組織内で確立した位置をもち,図書館教育と管理運営が一主任者の下に統括して実施せられている。学校図書館管理運営上問題があるのは,各国とも初等教育段階である。

種別
原著論文