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三田図書館・情報学会誌論文(論文ID LIS020001)

著者
小林道子
和文タイトル
User Needs and Library Services: A Study of Selected Hospital and Medical College Libraries in Japan.(利用者のニーズと図書館サービス:日本の病院図書室と医学図書館との比較)
英文タイトル
User Needs and Library Services
掲載号・頁
No.20, p.1-25
発行日
1983-03-25
和文抄録

昭和28年に施行された「医療法」第22条では,20床以上の総合病院に図書室の設置を義務付けている。しかしながら,図書室の管理・運営などの基本的な事項(即ち,蔵書構成や蔵書数,図書室の床面積,人員など)や,医療情報サービスについては触れられていない。

日本では,病院図書室に関する研究のほとんどが,病院図書室の管理・運営などの現況報告(fact-finding statistics)である。1981年度の厚生統計要覧によると,1980年末現在,日本には約9,000の病院があるが,病院間の図書館情報活動について十分な資料がない。現状を知るために,病院図書室研究会(病図研)か近畿病院図書室協議会(近病協)に所属する11の病院図書室と関東地方の日本医学図書館協会(JMLA)加盟の10の医科大学を対象に医療従事者の医療情報への関心と,情報活動について郵送調査を行った。調査項目は,1)医療従事者の図書館利用目的と図書館を利用しての充足度,医療情報源とそれを利用しての満足度,2)図書館利用者の情報活動に対する司書の理解度,及び 3)病院図書室利館利用者の医療情報活動に対する違いを知ることがでぎるよう工夫した。「図書館利用者」対象のアンケ用者と医科大学図書一トと「司書」対象のアンケートの2種類を作成した。図書館利用者は5名ずつを次の3グループから選び,合計15名とした。グループ 1―内科医,神経内科医,小児科医等を含む内科系医師グループ 2―外科医,整形外科医,産婦人科医等を含む外科系医師グループ 3―看護婦,臨床検査技師,理学・作業療法士等を含むパラメディカル系昭和57年2月23日から3月5日の間に,上記病院図書室及び大学図書館を利用した15名の利用者に「図書館利用者」対象のアンケート用紙を配布し,適宜回収するよう各館の主任司書に依頼した。

病院図書室利用者のアンケート回収率は,59.6%(225名中134名),医科大学は,77.3% (150名中116名)であった。内訳は,病院図書室内科系の利用者46名,外科系40名,パラメディカル系48名,及び医科大学内科系の利用者47名,外科系44名,パラメディカル系25名であった。司書のアソケート回収率は病院図書室が73%(15館中11館),医科大学が100%(全10館)であった。病院及び大学では利用者が図書館を利用する目的は,「個人研究」,「診療活動における必要性」,「自己研鑚」,「抄読会」の順であった。現在の図書館資料で図書館の利用目的が「十分果たされている」または,「特定分野については果たされている」と答えたのは,全利用者248名中,75名(30.2%)であった。図書館の資料で医学生物学情報が「十分果たされている」,または特定分野については得られている」と答えたのは病院図書室利用者32名(24.2%),医科大学が30名(25.9%)であった。最も多く利用する情報源は,「雑誌論文」であり,情報を必要としている理由は「臨床研究のため」であった。臨床医が最も多く利用する情報媒体について司書の予想は,「外国雑誌」次いで「国内医学雑誌」であった。183名中124名(67.6%)の利用者がクリニカル・メディカル・ライブラリアンシップ(CMLS)の提供を望んでいるのに対して,21名の司書中わずか4名(19%)が,CMLSの提供を希望していた。177名の臨床医中121名(68.4%)と73名のパラメディカル職員中26名(35.6%)がILLサービスを通して文献提供を受けたことがあった。また,177名の臨床医中108名(61%)と,73名のパラメディカル職員中17名(23.3%)がコンピューターによる文献検索サービスを受けたことがあった。利用者が,図書館の利用目的を果たすためには「専門書」次いで「国内雑誌」の収集に力を入れることを望んでいた。資料提供以外のサービスとしては「図書館の開館時間延長」次いで「欧和文タイプライティング」と「翻訳」サービスを望んでいた。

これらのアンケート調査の結果を踏まえて,病院図書室が利用者の要求に十分応えられるような情報活動の将来像を検討した。日本における医学生物学関係図書館のわずかな資料購入費と資源を考える時,館種や規模の大きさに関係なくすべての医学生物学図書館が自由に利用できるような国立の医学生物学情報センター(仮称)の設立が望まれる。同時に,図書館は絶えず変化している図書館利用者のニーズに応えるために利用者動向の観察(user survey)を続ける必要がある。

種別
原著論文